人工関節手術を決めるタイミング(股関節の場合)
安富診療所院長の黒田です。第7回のブログです。
今回のテーマは人工関節手術を決めるタイミングについてです。
人工関節手術は手技的に確立された効果の高い治療法です。
痛みで困っている方には痛みがゼロになり、痛みによる悩みから解放される良い治療です。
今回は股関節の痛みで悩んでいる方の参考になるように説明していきます。
人工股関節手術を行う病気で最も多いのが変形性股関節症です。
変形性股関節症の痛みは、動き始めや階段で違和感や痛みが生じ、その後、歩く時にも痛みが出現して受診されます。
強い痛みで困る時もあれば、あまり痛みを感じない日もあったりと、痛みの強さには波があることが多いです。
レントゲンで股関節の軟骨がすり減っているのが確認され、変形性股関節症と診断された場合、最初に行う治療は保存療法になります。
保存療法とは手術以外の治療の総称になります。
鎮痛薬の内服、物理療法、リハビリテーションを行います。
保存療法で痛みが軽減された場合は手術は必要ありません。
しかし、保存療法をしばらく行っても痛みが改善せず、日常生活に支障がある場合は手術も検討されます。
それでは日常生活への支障とは具体的にはどのような症状になるかを説明します。
手術が考慮される症状
・ 夜中に痛みで目が覚めるくらい痛い。
・ 強い薬に頼らないと生活できない。
夜中に目が覚めると不眠につながりますし、強い薬を使っていると胃が悪くなったり、腎臓が悪くなったりと副作用が発生しやすくなります。
・ 痛みで外出するのがおっくうになる。
痛みのために友達と出かけても同じ速度で歩けないため、外出を控えるようになった、旅行に行けなくなったなどのエピソードをお聞きすることがあります。
痛みのために外出がおっくうになることは、自由な行動、人生の楽しみが減少することにつながります。
また、痛みのためにテニスやガーデニングなどの趣味ができなくなることも人生の楽しみがなくなることにつながります。
・ 痛みのために仕事ができなくなる。
長時間の立ち仕事、重労働の仕事、頻繁に移動する仕事の場合は、業務がこなせなくなってしまうことで収入にも影響してします。
痛みがなくなれば、痛みで我慢していた旅行や趣味ができるようになりますし、仕事もできるようになります。
上記のような症状まで痛みが悪化した場合は手術も検討してもよいと思います。
手術を先延ばしにした場合の悪影響
手術に対する恐怖心が強く、痛みが強くても我慢するとどのような悪影響が出現するか説明していきます。
股関節は動きが悪くなり、脚が短くなってきます。
痛い股関節はしっかり体重がかけられなくなり、筋力や骨が弱っていきます。
脚が短くなることで左右のバランスが悪くなり、膝や腰に痛みが痛みがでてきます。
長期間これらの状態が続いた場合は、手術をして股関節の痛みはとれても、筋力の回復に時間がかかったり、腰痛や膝の変形が残ってしまったりすることになります。
適切なタイミングで手術を受けることも必要になります。
手術には怖いというイメージが大きいと思います。外来でも「手術は怖い」と言われます。
怖いと思う理由の中には「手術後痛いのではないか」、「しばらく歩けないのではないか」、「手術をしても痛みがとれないのではないか」などがあるようです。
最近の人工股関節手術は筋肉を切らず、傷も10cm程で行うことができるため手術後の痛みが少なく、回復も早くなっています。
手術の翌日から歩くことは可能で、1週間もすれば何も持たなくても歩けるようになります。(手術を先延ばしにして筋力が弱ってしまっている場合は、もう少し時間がかかります。)
入院期間は2週間もあれば十分で、日常生活や仕事に戻ることができます。
股関節の痛みでお悩みの方はどうぞご相談ください。