ハイドロリリース

肩の痛みのイメージ

慢性化して治らない肩こり、腰痛、肩の痛みなどに対し、当院では超音波装置を用いてハイドロリリースを行っています。

ハイドロリリースとは

痛みの原因となっている硬くなったファシアという組織を超音波装置で確認しながら生理食塩水という水を注射して硬さを緩める方法になります。

ファシアは「膜」という意味で、いろいろな臓器に存在します。
筋肉のファシアを「筋膜」といいますが、ファシアは神経周囲や腱などあらゆる組織に存在し、何らかの原因でファシアが硬くなり癒着すると治りにくい痛みの原因となります。

ファシアの癒着を剥がす手技であるため、「ファシアリリース」や「筋膜リリース」とも呼ばれます。

慢性化した肩こり、腰痛は筋肉のファシア「筋膜」が原因の可能性

筋膜には痛みの発生源となるトリガーポイントが生じると言われています。
同じ姿勢を長時間続けることや、同じ筋肉をずっと使い続けていくことで、筋線維に傷がつき炎症が生じて筋膜が硬くなります。
硬くなった筋膜は、血流が悪化して酸素不足に陥り痛みを発生させます。

トリガーポイントのイメージ

通常は自己修復して自然に治りますが、うまく治らないと硬くなった筋膜が痛みに敏感になりトリガーポイントとなります。
トリガーポイントを押すと痛みが広がるほか、その周囲や少し離れた部分でも放散痛がみられることもあります。

トリガーポイントのやっかいな点は痛くないはずの普通の刺激に対して筋膜が過敏になることで、肩こりや腰痛が慢性化する要因となります。
また、トリガーポイントが発生した筋膜は周囲と癒着して動きが悪くなることで痛みや突っ張りの原因となります。

ハイドロリリースの方法

ハイドロリリースの方法のイメージ

ハイドロリリースは、トリガーポイントに局所麻酔薬や生理食塩水を注射することで痛みを取り除きます。
薬液を注入することで厚く積み重なって硬くなった筋膜に潤いを与え、癒着を剥がしていきます。

トリガーポイントの位置を見つけ、正確に注射できるようにするためには超音波装置が必要です。
超音波装置の画像でトリガーポイントを確認しながら、できるだけピンポイントに注射していきます。
注射には採血の針よりも細い針を使用するので注入時の痛みは軽度です。

超音波装置を使わないで痛みの部位に局所麻酔薬を注射する方法では、正確にトリガーポイントに注入することは不可能であり、効果もばらつきがでます。

ハイドロリリースの効果

トリガーポイントの位置が正しければ、注射後痛みがやわらぐことが多いです。
一度で痛みが楽になることもありますが、通常は数回の注射で痛みは軽減されます。

長い間肩こりや腰痛でお困りの方、薬やマッサージなどいろいろな治療をしてきたが痛みが良くならない方、薬を飲みたくない方にはお勧めできる治療法です。

骨粗鬆症

当院で骨粗鬆症治療をお勧めする3つの特徴

  1. 最も信頼性の高い最新のDXA(デキサ)法によって骨密度を測定します。
  2. 血液検査によって古い骨を壊す骨吸収と、新しい骨を作る骨形成のバランスを把握します。
  3. 多くの飲み薬、注射薬の中からオーダーメイドの治療を選択します。

寝たきりや寿命を縮める原因となってしまう骨折を一人でも多く予防することを使命の一つと考えて診療しています。
骨粗鬆症に関することは何でもご相談ください。

骨粗鬆症は命にかかわる病気?

骨粗鬆症になってしまったらのイメージ

骨粗鬆症とは高齢の方の骨が弱くなって骨折しやすい状態というイメージではないでしょうか。
イメージとしてはおおむね正解ですが、あまり知られていないことは骨粗鬆症が原因で起きる骨折によって寝たきりになってしまうことや、寿命が縮んでしまうことです。

元気に生活できていた方が太ももの付け根の骨折を起こしたために、急激に全身の状態が悪くなり亡くなってしまうことも少なくありません。

骨粗鬆症の治療の目的は、寝たきりの原因となる骨折を予防することです。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症のイメージ

骨密度と骨の質を合わせたものを骨強度と言います。
この骨強度が著しく低下してしまい、まるで骨に鬆(す)が入ったかのように骨の中がスカスカの状態になって、骨自体がもろく折れやすくなってしまう病気のことを骨粗鬆症と言います。

骨粗鬆症の症状

  • 背が縮んだように感じる
  • 背中や腰が曲がったように感じる
  • 背中や腰が痛い
  • 息切れしやすい
  • 掃除がおっくうになる
  • おなかがすぐいっぱいになる
  • 外出がつらくなる など

いろいろな症状が骨粗鬆症によって起きます。

これらの症状は多くの場合、骨粗鬆症が原因とは認識されていません。
背中や腰が痛い場合は医療機関を受診しますが、その他の症状があっても骨粗鬆症の検査をしようと考えられることはないでしょう。

しかし、そのままの状態が続けば転んで手をついた際に手首を骨折したり、尻もちをついて背骨の骨折を起こしたりすることで骨粗鬆症に気付かれることになります。

また、検診で超音波を使用した骨密度検査で骨密度の低下を指摘されることもあります。

骨粗鬆症の原因

全身の骨は毎日古い骨を壊し、新しい骨を作るというサイクルを繰り返し骨のしなやかさや強さを保っています。

古くなった骨を溶かしていくこと骨吸収といい、破骨細胞という細胞が行っています。
破骨細胞によって溶かされた部分に新しい骨を作り修復すること骨形成といい、骨芽細胞という細胞が行っています。

正常な骨では破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成のバランスが維持されています。
骨粗鬆症はこのバランスが崩れ、骨吸収の力が大きくなることで新しい骨が作られる量よりも骨が壊される量が多くなり、骨がもろくなっていきます。

女性では閉経して女性ホルモンが減少することで、骨吸収を抑える作用が働かなくなり骨粗鬆症のリスクが増加します。
高齢者では骨形成も骨吸収も機能が低下しますが、特に骨形成が低下して骨粗鬆症になります。

無理なダイエット、運動不足といった生活習慣が原因となることもあります。
その他には、病気(副甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病 など)やステロイドの長期使用、寝たきり状態が長期間続いている場合などが挙げられます。

骨粗鬆症の頻度

女性は男性の3倍の頻度になります。
女性の60代で30%、70代で40%、80代で55%が骨粗鬆症になっており、80代は男性でも20~30%が骨粗鬆症になっています。

日本では40歳以上の骨粗鬆症患者さんは1280万人(男性300万人、女性980万人)と推計されています。
骨粗鬆症の発生率が上昇する70代から骨折も増加します。

骨粗鬆症の骨折

骨粗鬆症によって骨折しやすい箇所は、背骨(椎体圧迫骨折)、太ももの付け根(大腿骨近位部骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、肩(上腕骨近位部骨折)です。

椎体圧迫骨折のレントゲン写真
椎体圧迫骨折
大腿骨近位部骨折のレントゲン写真
大腿骨近位部骨折
(大腿骨転子部骨折、大腿骨頸部骨折)

椎体圧迫骨折は、一度骨折を起こすと骨折したそばの椎体が次々と骨折し、背骨の変形が進んでしまいます。

骨粗鬆症の骨折のイメージ

大腿骨近位部骨折は基本的に手術が必要になりますし、1年後には20%の方が自分でズボンがはけなくなり、50%以上の方が介助なしでは歩けなくなります。
そして1年後の死亡率10%であり、10人に1人が死亡するという非常に高い割合となっています。

また、骨折による死亡リスクの増加を調べた研究では、大腿骨近位部骨折を受傷すると死亡リスクは6.7倍に増え、椎体骨折を受傷すると8.6倍に増えてしまうことがわかっています。
繰り返しになりますが、骨粗鬆症寝たきりになり、寿命が縮んでしまう怖い病気です。

大腿骨頚部骨折の術後レントゲン写真
大腿骨頚部骨折の術後レントゲン

骨粗鬆症の問題点

骨粗鬆症の患者さんの約80%が未治療であることがわかっています。

骨粗鬆症は自覚症状が現れにくく、背中や腰の痛みがない方であれば医療機関を受診しないため、診断されないという問題があります。
検診で超音波を使って骨密度を調べることが行われていますが、検診率はまだまだ低いのが現状です。

また、骨粗鬆症と診断されても、骨粗鬆症が骨折や寝たきりにつながるという認識が足りないため治療を受けない、継続しないことも問題です。

骨粗鬆症の検査、診断

DXA(デキサ)法

DXAのイメージ

骨粗鬆症の診断にはDXA(デキサ)法というX線で骨密度を診断する機器を使います。
当院では最新のDXAを導入しています

腰の骨(腰椎)と太ももの骨(大腿骨)の付け根の2か所で測定します。
骨粗鬆症のガイドラインでは「腰椎と大腿骨での骨密度検査」を骨粗鬆症の診断・治療の判定基準にしており、信頼性の高い検査になります。
治療前の状態と治療開始後の変化を比較していきます。

他の画像検査として、超音波で踵の骨密度を調べる方法や手のレントゲンを使う方法がありますが、信頼性で劣ります。

DXA法の結果で下記の①~③の場合は骨粗鬆症と診断されます。

  1. ① 若年成人の骨密度平均値(YAM値)の70%未満
  2. ② 骨折歴があってYAM値の80%未満
    骨折歴(手首、肩、肋骨、骨盤、すねの骨折)
  3. ③ YAM値の70%以上80%未満の場合
    骨折発生リスクを計算するツールで骨折発生率が15%以上または
    家族が大腿骨近位部骨折を受傷したことがある場合

また、椎体圧迫骨折、大腿骨近位部骨折を受傷したことがあれば骨粗鬆症と診断されます。
これらの骨折がある場合は骨密度がYAM値の80%以上でも治療の対象となります。

レントゲン検査

椎体圧迫骨折は無症状の方が多いため、レントゲン検査を行います。
骨密度が正常値でも圧迫骨折がある場合は治療の対象となります。

骨代謝マーカー、カルシウム、ビタミンDを調べる血液検査

骨が壊される量が多いのか(骨吸収マーカーを測定)、作られる量が少ないのか(骨形成マーカーを測定)を血液検査で判断します。
これらのマーカーを骨代謝マーカーといいます。

骨を作るのに必要なカルシウムや、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの量も調べます。
治療薬の選択や効果判定にも有用です。

検査項目

  • 骨が壊されている指標 TRACP-5bなど
  • 骨が作られている指標 P1NPなど
  • 骨を作るために必要な成分 ビタミンD、カルシウム

骨粗鬆症の治療

食事療法

骨を作るのに欠かせない栄養素である、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質を多く含む食品を摂取する必要があります。
高齢になって食事量が減少すると、骨や筋肉の維持に必要な栄養素の充足が難しくなります。
そのため、栄養やカロリーのバランスが良い食事を規則正しくとるようにします。

カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品、豆腐やがんもどきなどの大豆製品、小魚に多く含まれています。
ビタミンDは鮭やサンマ、カレイなどの魚類や卵、干し椎茸に多く含まれています。

運動療法

運動のイメージ

骨に適度な負荷をかけることで、骨密度を維持、改善させることができます。
ウォーキングのような無理のないゆっくりと体を動かす有酸素運動を行います。
紫外線を浴びて体内でビタミンDを作りやすくすることも必要です。

転倒を防ぐために筋力をつける、体幹を鍛えるといったことも大切です。
当院では筋力を鍛えるリハビリテーションができます

薬物療法

骨粗鬆症では古い骨を壊す骨吸収と、新しい骨を作る骨形成のバランスが悪くなっています。
薬によって骨吸収を抑えたり、骨形成を促進させたりすることでバランスを改善させます。

骨代謝マーカーやビタミンDの量を血液検査で測定した上で、患者さんの骨折歴や通院状況を考慮して薬を選択します。

骨粗鬆症の薬
骨を作るのに必要な成分の補充
活性型ビタミンD製剤(エルデカルシトール、アルファカルシドールなど)
小腸でカルシウムを吸収するのを助けます。毎日飲む薬になります。
骨吸収を抑える薬
ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ミノドロン酸、ゾレドロン酸など)
最もスタンダードな薬剤です。骨に取り込まれて骨を壊す破骨細胞の働きを抑えます。
朝起きたら水道水コップ1杯(約180ml)で、食事の前に内服します。そうしないと吸収率が極端に落ちます。
また薬が逆流するのを防ぐため、飲んだら30分は横にならずに起きている必要があります。
1週ごと、4週ごとの内服薬や、点滴限定ですが年1回投与の薬があります。
デノスマブ
RANKL(ランクル)とよばれる、破骨細胞を活性化するタンパクの働きを抑えます。
半年に1回、皮下注射します。
骨密度を上昇させる効果が大きく、椎体骨折、大腿骨近位部骨折、非椎体骨折の全てに対して骨折予防効果があります。
SERM(サーム)製剤(バゼトキシフェン、ラロキシフェン)
女性ホルモンに近い成分で、骨のエストロゲン受容体に結合して破骨細胞の働きを抑えます。
骨の本来持っているしなやかさ、骨質を主に改善するとされています。
75歳未満で骨折歴のない方には第一選択とすることが多いです。
骨形成を促進する薬
テリパラチド製剤
骨を作る骨芽細胞の働きを促進することで骨密度を上げる薬です。
週1回通院で行う皮下注射と毎日または週2回の自己注射があります。
特に背骨の骨密度の改善効果に優れています。
一生のうち2年間限定で投与できます。
骨吸収を抑えて、骨形成を促進する薬
抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤
2019年に承認となった新しい薬で、最も骨密度の上昇効果が高いと考えられています。
骨折の危険性が高い骨粗鬆症の基準に当てはまる場合に使用できます。
1年間、月に1回皮下注射をします。
ごく少数ですが心臓の血管が詰まるなどの副作用が報告されています。