多くの人がかかえる肩こり
肩こりとは、 首の後ろから背中にかけての筋肉がこったような、非常に嫌な痛みを感じる状態をいいます。
「痛い」「重い」「苦しい」「だるい」「違和感がある」「ジンジンする」「冷たい」など、人によって感じ方もさまざまです。
2019年の国民生活基礎調査では、病気やケガによる自覚症状の中で肩こりが女性では第1位、男性では第2位を占めており、多くの方が悩まされる代表的な痛みの1つです。
当院では肩こりの治療に効果的な超音波装置を用いたハイドロリリースを行っていますのでご相談ください。
肩こりは筋肉が緊張し硬くなることで起きる
首と肩の周辺には、さまざまな筋肉があります。
これらは重い頭や腕を支えているために立ったり座ったりしているだけで、緊張し続けています。
緊張が続くと筋肉が疲れて筋線維に傷がつき炎症が生じて筋膜が硬くなります。
硬くなった筋肉は血管を圧迫して血行を悪くし、疲労物質が蓄積され酸素不足に陥りこりや痛みを起こします。
筋肉に存在する筋膜も硬くなると、筋肉の間が癒着して動きが悪くなり筋肉に疲労がたまって、ますます筋肉が硬くなってしまいます。
硬くなる筋肉は、首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋が中心になります。
僧帽筋の深層にある肩甲挙筋や板状筋といったインナーマッスルも硬くなりやすく、僧帽筋とインナーマッスル間の筋膜が癒着して痛みの原因となります。
筋肉が硬くなる原因は?
デスクワークなどで長時間同じ姿勢をとっている
長時間パソコン等のデスクワークをしているときは、ほとんどの人が首を前に突き出し、両肩がすぼんだ姿勢になっています。
この姿勢では首から肩の筋肉が緊張し疲労を感じるため、血流が悪くなり肩こりを起こしてしまいます。
長時間のスマートフォンの使用
デスクワークと同じでスマホを使用しているときも首が前かがみとなって背中が丸くなり、筋肉が緊張してしまいます。
猫背になりやすく姿勢が悪いことも筋肉が硬くなる原因となり、肩こりが起きやすくなります。
運動不足
運動不足になると筋力が低下し、弱くなった筋力で頭や腕を支えるため筋肉が緊張しやすくなります。
また、筋肉の収縮力が弱くなることで血液を送り出す力が不足するため血流が悪くなり、疲れやすいうえ、肩こりが起きやすい体になってしまいます。
ストレス
日々のストレスが血管を収縮させてしまうことで筋肉の血流が悪くなり、肩こりが起きてしまいます。
他には冷房による体の冷え、枕が合っていない、眼精疲労なども筋肉の緊張から血流の悪化をきたすことで肩こりの原因となります。
頚椎疾患、頭蓋内疾患、高血圧症、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、肩関節疾患、内臓疾患など多くの病気も肩こりの原因となります。
予防と自宅での治療
- 同じ姿勢を長く続けない。
- 肩を温めて筋肉の血行をよくするため入浴などで身体を温め、リラックスする。
- ストレッチや適度な運動、体操をする。
最近ではYouTubeにストレッチや体操の動画が多数あるので参考になります。
診断
問診や頸椎の可動域の確認、触診で僧帽筋や肩甲挙筋の圧痛点と筋緊張を確認します。
肩関節可動域も確認します。
レントゲンで頚椎疾患のチェックなども行い診断します。
当院で行う肩こりの治療
ハイドロリリース
筋肉内や筋肉間の筋膜が癒着している部分に超音波装置を使ったハイドロリリースを行い、硬くなった筋膜に潤いを与え、癒着を剥がしていきます。
直接筋肉の硬い部分を治療するため、症状が軽くなることが多いです。
物理療法
電気刺激治療、磁気治療、ラジオ波などによって血流を増加させ、酸素・栄養素の供給を改善させます。
磁気治療、電気刺激治療は筋肉を刺激して収縮させることで筋肉の硬さを改善させる効果もあります。
体外衝撃波治療
拡散型体外衝撃波によって硬くなった筋肉をほぐします。
痛みの発生源になっているトリガーポイントにも効果的で、痛みを改善させます。
運動療法
ストレッチや筋力強化の運動療法を個別リハビリで行います。
体操やストレッチの指導も行います。
薬物療法
痛みを抑えるため消炎鎮痛薬、筋肉の緊張を和らげるために筋弛緩剤を使用します。
シップや塗り薬などの外用薬も使用します。
首の痛みがみられる
頸椎疾患
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアの症状
- 首や背中、肩から腕にかけての痛みやしびれ
- 肩が挙がらない、肘が曲げにくい伸ばしくいなどの筋力低下
- しびれで箸が使いにくい、ボタンがかけづらい
- 脚がもつれる、歩きづらい
頸椎椎間板ヘルニアとは
頸部の背骨を頸椎といいます。
頸椎は7つあり、椎間板は頸椎の間に存在し、頸椎をつなぐクッションの役割をしています。
椎間板が後方に飛び出すことをヘルニアといいます。
後方に飛び出したヘルニアが後方にある脊髄を圧迫することで、首や腕の痛み、しびれなど様々な症状を引き起こします。
原因
椎間板ヘルニアは、椎間板へのストレスがかかり続けることが原因として挙げられます。
主に加齢変化によって起きるため、30~50歳代に多く、しばしば特にきっかけがなく突然発症します。
首を使いすぎたり悪い姿勢を続けたりする仕事やスポーツなどが誘因になることもあります。
診断
頸椎を後方や斜め後方へそらせるとヘルニアによる脊髄の圧迫が強くなるため、腕や手に痛み、しびれが出現したり強くなったりすることを確認します。
手足の感覚や力が弱いこと、手足の腱反射の異常などで診断します。
レントゲンやCTで骨の状態を確認します。
MRIで神経根や脊髄の圧迫を確認し診断を確定します。
当院にはMRIがないため、MRIが必要な場合は他院に撮影を依頼します。
治療
薬物療法
治療の第1選択になります。
消炎鎮痛薬と神経障害性疼痛に効果がある薬(プレガバリンやミロガバリン)を使用します。
当院では、痛みが軽くなるまで症状に合わせて適切な鎮痛薬を選択します。
安静や頸椎カラー
痛みが強い時期には首の安静保持を心掛け、頸椎カラーを用いることもあります。
リハビリテーション
症状に応じて牽引療法を行ったり、物理療法や運動療法を行ったりします。
神経ブロック
強い痛みが続く場合は神経根ブロックを行うこともあります。
手術療法
これらの方法で症状の改善がなく、上肢・下肢の筋力の低下が持続する場合、歩行障害・排尿障害などを伴う場合は手術的治療(前方固定術など)を選択することもあります。
頸椎症性神経根症
頚椎症性神経根症の症状
首~肩甲骨周囲、腕~手の痛みが生じます。
腕や手指のしびれが出ることも多く、耐えられないような強い痛みがでることもあります。
肩が挙がらない、肘が曲げにくいなどの筋力低下が生じることも少なくありません。
頸椎症性神経根症の原因と病態
頸部の背骨を頸椎といいます。
頸椎は7つあり、椎間板は頸椎の間に存在し、頸椎をつなぐクッションの役割をしています。
椎間板は20歳過ぎから加齢による老化現象(変性)が始まると言われています。
変性が進むと椎間板が潰れたり、神経の方に膨れたりしてくるようになり、骨が変形して骨棘という出っ張りが生じます。
このような変形が生じることを「頸椎症」といいます。
頸椎の内部には脊髄という神経が通っており、脊髄から椎間孔という穴を通って神経が腕に向けて分岐していきます。
脊髄から分岐した神経を「神経根」といいます。
神経根が骨棘によって圧迫されたり刺激されたりすることで痛みやしびれが生じます。
この状態を「神経根症」といいます。
したがって、「頸椎症性神経根症」とは、加齢による頸椎の変形によって神経根が圧迫を受けることをいいます。
診断
肩甲骨周囲や腕、手の痛みがあり、頚椎を後方へそらせると症状が増強することを確認します。
レントゲンやCTで頸椎症の変形を起こしているのを確認します。
MRIで神経根の圧迫を確認して診断します。
当院にはMRIがないため、MRIが必要な場合は他院に撮影を依頼します。
治療
基本的には自然に痛みが無くなり、自然治癒する疾患です。
痛みやしびれが出ないように頸椎を後方へそらさないようにします。
薬物療法
治療の第1選択になります。
消炎鎮痛薬と神経障害性疼痛に効果がある薬(プレガバリンやミロガバリン)を使用します。
痛みが軽減しない場合は、他の種類の鎮痛薬を追加することもあります。
当院では、痛みが軽くなるまで症状に合わせて適切な鎮痛薬を選択します。
リハビリテーション
症状に応じて牽引療法を行ったり、物理療法や運動療法を行ったりします。
手術療法
筋力低下が著しい場合や、薬物療法などを行っても強い痛みが続いて仕事や日常生活に支障をきたしている場合は、手術療法を行う場合もあります。
頸椎症性神経根症は自然治癒する疾患です。
しかし、自然治癒するとはいっても痛みがなくなるまでには数ヵ月以上かかることも少なくありません。
痛みが強い時期は長くはありませんが、治るまで気長に治療する必要があります。